座右の書『ヴァージン―僕は世界を変えていく』

■国内航空券ウェブ販売の最大手「エボラブルアジア」
道岡: エボラブルアジアといえば、2016年3月に東証マザーズに上場されまして、それから毎日のように名前を聞くくらい勢いのある会社だと思うんですけど、改めてどういう会社なのか教えていただけますか?
吉村: はい。弊社では大きく分けてオンライン旅行事業、訪日旅行事業(インバウンド)、ITオフショア開発事業、この3つの事業を行っています。メインとして行っているオンライン旅行事業では、国内航空券を主に扱っております。国内航空券のウェブ販売においては業界最大手です。
道岡: なるほど。創業まではどのような流れだったんですか?
吉村: エボラブルアジアは現会長の大石と僕の2人で作った会社でして、もともとはお互い別の会社を経営していたんですが、2007年に経営統合させて創業しました。
道岡: それから9年目で上場されたんですね。それでは、今まさに勢いに乗っているエボラブルアジア、そして吉村さんに成功のきっかけを与えた「座右の書」をご紹介いただきたいと思います。
■吉村社長の“座右の書”「ヴァージン―僕は世界を変えていく」
吉村: 僕がご紹介したいのは、ヴァージングループ総帥のリチャード・ブランソンさんが書かれた「ヴァージン―僕は世界を変えていく」という本です。僕は昔からこの本がすごく好きで、何度も読み返しています。内容を簡単に紹介させていただきますと、本書はリチャードさん自身のエピソードが詳細に綴られた自伝になります。ちなみに彼の会社、ヴァージングループは、音楽関係や航空関係、飲食関係、銀行、スポーツジムなどいろんな事業を世界各地でされている世界最大規模の非上場会社です。
道岡: という事は、エボラブルアジアはヴァージングループを参考にされている部分が多いんですね。
吉村: その影響は大きいと思います。特に気に入っている理由として3点に分けてお話しさせていただければと思います。まず1つは、ベンチャービジネスにおけるリスクテイクの部分であったり、仲間集めの部分、また、感激の瞬間や絶望の瞬間があったり、いろんなストレスの積み重ねがあったり等々、ベンチャービジネスに必要な要素や、起こりうる事など全てが、この一冊に凝縮されている点ですね。2点目は、ビジネスを通して世界に付加価値を与えていくという事が体現されている点です。付加価値って大きく2つに分かれると思うんですけど、1つはビジネス自体が存在することで、世の中により良い意味合いを与えている事、もう1つは、今この瞬間、自分は今の会社にいた方がベターだという付加価値をみんなが持っているという事なんです。
道岡: それはやはりブランド力によるものなんですか?
吉村: ブランドの力もあると思いますし、やっぱり楽しさでもあるんじゃないかなと思います。ヴァージングループに所属している事に対する喜びや、キャリアの付加価値を感じられるんじゃないかなと。自分も実業家として頑張っていきたいと思っているので、ビジネスそのものに関してはもちろん、エボラブルアジアのメンバーにも、今の会社に属している事に対して喜びを感じてもらえるようにしたいですね。
道岡: なるほど~。
吉村: それから3点目なんですけど、リチャードさんのエピソードはストレスの連続なんです。同じ事業を続けるのではなく、どんどん違う業態に、かなりのリスクを背負って入っていかれるので、当然のことながら大変な苦労をされています。その中でも彼は人生に対する希望を失わず、毎日新しい楽しみを生みながら生きていらっしゃいます。自分もここまでビジネスをやってきているので、ストレスを感じることは時折あったりするんですが、そういう時には、この本を読み返して、「こんな小さなストレスで悩んでいる場合じゃない」、「一回きりの人生だから楽しく生きていこう」という気持ちにさせてもらっています。
■国内線「エアトリップ」を「ヴァージン」のようなブランドへ
道岡: この本、実は600ページ以上あって、辞書のような厚さなんですけど、何度も読み返されたんですね。特に印象深かったリチャードさんのエピソードはありましたか?
吉村: リチャードさんはずっと音楽関係の事業で成功されていたんですが、なんの脈絡もなく航空業界に入られたんです。ですけど、航空関係は競争が激しい業界ですから、資金もショートしていきました。その後、これまで育ててきた音楽関係の事業を全て売却し、航空事業を再生させたんです。個人的にはこのエピソードが一番好きですね。ストレスフルな中で、壁を乗り越えていく姿に感銘を受けました。
道岡: なるほど、1つの事にとらわれないで数多くの事業に挑戦されていくバイタリティはすごいですね。吉村さんも現在、航空会社さんとお仕事をされていると思うんですけど、そこもやはりヴァージングループの影響を受けてらっしゃるんですか?
吉村: それ自体はたまたまなんですが、果敢に横展開されていくのはすごいなと思います。それも全部自社でやっている話ではないんですよね。それぞれ事業ごとに、資本パートナーを変えて、「この事業はこの会社とやる」という形で展開されているんですけど、この形態はすごくいいなと思っています。また、リチャードさんが一番重要視されているのは、ヴァージンのブランドなんです。弊社も「エアトリップ」という国内線のブランドがあるんですけど、「国内線と言ったらエアトリップ」と言われるように、誰もが知っているブランドにしていきたいですね。